はじめに
CBDAとはCannabidiolic Acidの頭文字をとった略称で、カンナビスに含まれる植物性カンナビノイドの一種で、
CBDは、CBDAを脱炭酸したカンナビジオールの略称です。CBDには向精神作用がないため、ライフスタイルのあらゆる場面で使用する事が出来ます。
本稿では、あまり知られていないCBDAに焦点を充て、カンナビノイドの中で最も有名な化合物であるCBDと比較しながら、その効果や性質などについて掘り下げていきたいと思います。そして、この記事の内容が、憶測で語られることの多いカンナビスのイメージを払拭する手助けになれば幸いです。
CBDA vs CBD – 比較早見表
成分 | CBDA | CBD |
カンナビノイド | 天然由来のフィトカンナビノイド – CBDの前駆体 | 天然 |
生体内合成 | 母体となるカンナビノイド-CBGAから変換される | CBDAデカルボキシラーゼによりCBDに変換される(熱、光、時間による) |
精神活性作用 | なし | なし |
治療効果 | 予備研究 段階 | 極めて高い |
原料 | カンナビス・サティバ | カンナビス・サティバ |
分子構造 | C22H30O4 | C21H30O2 |
ECSとの相互作用 | なし(ただし、セロトニン受容体には作用する) | 複数の分子経路を経由する |
CBDAの背景
THCA vs THCの記事では、カンナビノイドの生合成プロセスについて簡単に触れました。こちらも合わせてご覧ください。
CBGA(カンナビゲロール酸)は、3つの主要なカンナビノイドCBC、THC、CBDの母体となる化合物であり、熱、光、時間、酵素反応などの影響によりCBCA、THCA、CBDAに変換されてその寿命が尽きます。
これらカンナビノイドについては、それぞれに焦点を充てた研究が現在も行われており、日々新たな発見が発表されています。
CBDAの原料は?
酸性であるCBDA、THCA、CBCAを含むCBGAは、収穫されるか脱炭酸されるまで、植物の中でその酸性構造を保ち続けます。
何からCBDAがとれる?分離方法とは?
最新の研究では、カンナビジオール酸はヘンプシードオイルの成分の中で最も重要な化合物であると結論づけられています。1
これまであまり注目を浴びてこなかったこのようカンナビノイドも、近年その分離や精製の方法を明らかにするための研究が盛んに行われるようになりました。
この研究では、産業用ヘンプの花粉からCBDAを抽出することを模索しており、より複合的で代替的な抽出処理技術を用いることにより、2つの異なる供給源、すなわちヘンプの種子油と花粉、さらにはその副産物や廃棄物から、多くのCBDAを抽出する事ができると示唆しています。
エンドカンナビノイドシステムにおけるCBDAの役割
CBDAは、他の植物性カンナビノイドとは異なり、エンドカンナビノイドシステムとは相互作用しない代わりに、セロトニン系との相互作用によって多様な治療効果をもたらします。セロトニンは、脳内にある神経伝達物質で、気分、睡眠、社会行動、食欲、睡眠、性欲、記憶などのバランスを調節しています。
CBDAが体に作用するメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、CBDと同様、その他数多くの治療効果があると考えられています。
2018年の研究では、CBDAがラットとヒトの5HT1A受容体を活性化させる事が明らかになりました。2
※ 5HT1A・・・セロトニン受容体のサブタイプで、脳、脾臓、新生児の腎臓に存在する神経伝達物質
CBDAの治療効果
CBDの医学的な効果はすでに知られていますが、CBDAに関してはまだまだ認知が進んでいないのが現状です。ところが、近年行われた研究では、 CBDAが薬理学の分野において大きな医療応用への可能性がある事がわかりました。
CBDAが持つ治療効果には、2つの解釈が考えられます。
一つ目は、CBDAは他の植物性カンナビノイドとは異なりエンドカンナビノイドシステムと相互作用しないため、薬理学的に不活性だという捉え方です。
二つ目は、CBDAは治療効果を引き起こすために異なるメカニズムを使用しているという解釈で、これは
- 2015年に行われたネズミのモデルを使った実験の結果から導き出されたものです。この実験では、3 マウスにTHCとCBDAを同時に投与したところ、急性の吐き気が止まったという報告があります。また、高用量投与を行ったところ、CBDAではTHCとは異なり運動量は減りませんでした。
- 同様に、2016年の研究では、前臨床モデルの予期性悪心(AN)の治療において、CBDAの臨床的有効性が報告されました。4
ANは、治療やコントロールが難しい疾患と言われているため、CBDAがこの疾患に発揮する治療効果は、現在薬物療法を受けているAB患者に希望を与えるものでしょう。現在一般的に処方されている薬のほとんどがベンゾジアゼピン系薬剤ですが、その有効性や鎮静作用には限界があり、依存性もあるため、乱用の危険性も高いことが知られています。
したがって、鎮静性で向精神作用がなく、さらに副作用がほとんどないCBDAは、新しいAN治療法として極めて有望な成分といえるでしょう。
- また、CBDAが乳がん細胞の転移を食い止める事ができる可能性については、2017年の研究ですでに検証されており、結果としてCBDAは非常にアグレッシブに乳がん細胞の移動を阻害したと報告しています。5
- このように、CBDAの治療の可能性への期待が高まってきたものの、2018年の研究論文の中で、CBDAは不安定な成分なため、医薬品として応用するには不適合だと指摘されています。6 ここでいう不安定とは、熱にさらされるとCBDAが弱くなる性質を指しています。
そこで、CBDAと似た生物学的作用を持っていながらより安定したアナログ(類似体)であるメチルエステルとの比較が行われました。その結果、CBDAがもたらす効果は、メチルエステルよりも効果的に急性の吐き気を和らげました。
- また、CBDAが持つその他の効果としては、エンドカンナビノイド系の酵素の阻害、TRPV1の活性化、シクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害などがあります。
CBDAの使用方法
CBDAは、とても簡単に摂取できます。CBDAは、とても簡単に摂取できます。
- 収穫したばかりのカンナビスの生葉をフレッシュジュースにしたり、果物と一緒に熱湯に入れてフルーツティーとして飲む
- カンナビスの葉をサラダ、パスタ、ピザ、サンドイッチなどに入れる
- 料理の飾りに使う
他にもアイデアがありましたら、ぜひ下のメッセージボックスにコメントをお寄せください。
CBDとは?
カンナビジオールは、カンナビス・サティバの植物に自然に存在する数百種類の植物性カンナビノイドの一種で、向精神作用を持たない事が特徴です。
このCBDは、向精神作用のあるテトラヒドロカンナビノール(THC)と並んで最もカンナビス・サティバに多く含まれているカンナビノイドだったため、
発見された当初、CBDには向精神作用があると考えられていました。
CBDの原料は?
カンナビノイドは、カンナビスの様々な部位に存在しているため、植物全体に薬効があり、全ての部位がその他の化合物の抽出に活用されています。
2012年の研究では、主要なカンナビノイドの宝庫であるである頭状の腺毛またはトリコームに焦点を充てており、7 8週間にわたる開花期の間に収穫し、分離処理を施した結果、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビゲロール酸(CBGA)が多く確認されました。
CBDAとTHCAは、CBDとTHCの酸性状態の前駆体であることはよく知られています。
CBDは、オイル、ペースト、チンキ、カプセル、リキッド、グミなど、さまざまな形態で摂取・使用する事ができます。現在も、ライフスタイルのあらゆる場面で使えるように、新しいタイプの製品が開発され続けています。
CBDの治療効果
慢性痛、てんかん、日常生活の質の向上など、CBDの応用範囲は日に日に広がりを見せています。
CBDには、人や動物に対する数多くの治療効果がありますが、カンナビス産業がこれだけ急速に成長している理由はそれだけではありません。
科学的研究、事例証拠、医療用カンナビスでの治療を受けている患者からの肯定的な声、天然医薬品への需要拡大、製薬会社や栄養補助食品会社からの投資など、さまざまな追い風がこの市場の拡大に寄与してるのです。
さらにある研究では、CBDは安全性が高く、動物実験や臨床実験でも副作用は軽微なものしか確認されなかったと報告されました。8 また、CBDは非精神活性であるため、乱用されるリスクが低く、治療薬として極めて安全であると結論づけています。
CBDの主な治療効果は以下の通りです。
- 物質使用障害の症状緩和
- 抗けいれん作用
- 難治性のてんかんに効果があるが、動物モデルでは結論が出ていない
- 神経保護・抗炎症作用
- 不安症、統合失調症、9 依存症などの精神神経疾患に効果があるという報告あり
- 鎮痛・抗がん作用10
- 疼痛管理や疼痛関連疾患におけるCBDの有効性に関する最新の研究結果あり11 (摂取量や摂取方法には注意してください)
まとめ
- CBDとCBDAは似たような生物学的特性を持っているが、その治療効果は異なる部分も多い。
- 研究データや事例の数はCBDの方が圧倒的に多いが、現在注目が高まりつつあるCBDAも、今後新たな作用が明らかになる事が期待できる。
- それぞれのカンナビノイドについて理解を深めることで、その知識を生かしてより安全で効果的にカンナビス製品を使用できる。
参考文献
- Formato M, Crescente G, Scognamiglio M, et al. (‒)-Cannabidiolic Acid, a Still Overlooked Bioactive Compound: An Introductory Review and Preliminary Research. Molecules. 2020;25(11):2638. Published 2020 Jun 5. doi:10.3390/molecules25112638 [↩]
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- Rock, E.M., Limebeer, C.L. & Parker, L.A. Effect of combined doses of Δ9-tetrahydrocannabinol (THC) and cannabidiolic acid (CBDA) on acute and anticipatory nausea using rat (Sprague- Dawley) models of conditioned gaping. Psychopharmacology 232, 4445–4454 (2015). https://doi.org/10.1007/s00213-015-4080-1 [↩]
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- Takeda S, Himeno T, Kakizoe K, et al. Cannabidiolic acid-mediated selective down-regulation of c-fos in highly aggressive breast cancer MDA-MB-231 cells: possible involvement of its down-regulation in the abrogation of aggressiveness. Journal of Natural Medicines. 2017 Jan;71(1):286-291. DOI:10.1007/s11418-016-1030-0 [↩]
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- Happyana, Nizar & Agnolet, Sara & Muntendam, Remco & Dam, Annie & Schneider, Bernd & Kayser, Oliver. (2012). Analysis of cannabinoids in laser-microdissected trichomes of medicinal Cannabis sativa using LCMS and cryogenic NMR. Phytochemistry. 87. 10.1016/j.phytochem.2012.11.001 [↩]
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