依存症は、ほとんどの医学会で疾患と定義されており、糖尿病、がん、心臓病などと同様に、生活習慣、環境、生物学的な要因の組み合わせによって引き起こされますが、その約半分は遺伝的要因であるといわれています。依存症を治療せずに放っておくと、他の身体的・精神的疾患を併発し、医療機関での治療が必要になり、さらには深刻な後遺症が残ったり、命の危険が及ぶ場合もあります。
こうしたリスクを抱える薬物・アルコール依存症は、有害だと知っていても薬物やアルコールに身体的、心理的に依存してしまうことを特徴とする、れっきとした脳の病気なのです。依存症患者は、自分の問題を十分に認識している場合がほとんどですが、それでも止めることができないジレンマを抱えています。薬物・アルコール依存症は、薬物やアルコールを長期にわたって乱用することで引き起こされます。また、治療が効果的でないと再発する可能性が非常に高いことから。再発性疾患とも言われています。薬物乱用をしてしまうきっかけは様々で、仲間からのプレッシャー、うつ病、薬物の入手のしやい環境要因など多岐に渡ります。
米国では、2017年にトランプ大統領によって、オピオイド依存症は公衆衛生上の緊急事態であると宣言されました。現在この問題は、オピオイド危機として認知されています。また、2015年には処方薬である鎮痛剤の過剰摂取によって20,101人もの人が死亡し、このうち1万2,990人は、ヘロインの過剰摂取によるものだと発表されました。さらに2016年にアメリカ合衆国保健福祉省が発表したオピオイドの過剰摂取による死亡者数は42,000人でした。これらの統計結果は、にわかに受け入れがたいものです。
この数年間で、多くの研究者たちがカンナビスに含まれる化合物であるカンナビジオール(CBD)の依存症治療における有用性について調査を進めており、すでにその治療効果を示唆する結果が発表されています。しかしながら、米麻薬取締局(DEA)はいまだにCBDをスケジュール1に分類しており、乱用リスクが懸念されています。それにもかかわらず、29もの州が医療目的としてのカンナビス使用を合法としています。
薬物として認知されてきたカンナビスに含まれる成分が、どうして薬物依存症を治療する事ができるのかと疑問に思う人は多いかもしれませんが、CBD単体には、依存症の原因となる脳内の神経経路を修正し、欲求や離脱症状を軽減する働きがあるのです。医療用カンナビスの乱用は、適切なタイミングでの診断と治療がなされていない事で起こり、カンナビノイド過嘔吐症候群につながる恐れがあるため非常に危険です。
依存症にCBDが有効だと言われている理由
驚く人も多いかもしれませんが、CBDが様々な疾患に対して治療効果を有しているという事実は、すでに多くの研究結果によって証明されており、代表的なものではてんかん発作、炎症、慢性的な痛みなどに対する抑制効果が臨床研究などで実証されました。また、がん患者の吐き気など、化学療法の影響を軽減するためにもCBDは使用されています。
CBDが依存症治療薬として有効だとされる理由の一つに、向精神性作用を持たない事が挙げられます。つまり、カンナビスの摂取によってもたらされる「ハイ」な状態の要因となる成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)とは違い、不要な精神活性を起こす事なく治療効果を得る事ができるのです。また、興味深いことにCBDにはTHCの向精神作用を中和する効果があることもわかっています。これは前述の通り、CBDは脳内の神経経路を修正して、欲求や禁断症状を抑える働きがあるためで、これにより、CBDによる依存症治療を受けると薬物を欲しなくなり、再発のリスクが低くなるのです。
依存症治療にCBDを使用するメリット
依存症治療薬としてのCBDの治療効果は無限大です。まず、CBDは依存症によって沸き起こる渇望を抑えるため、依存対象の誘引にさらされた時でも我慢する事ができる様になります。オピオイドやアルコールの依存症から立ち直った患者の85%は1年以内に再発するというデータがあるため、このCBDの効果が再発を防止する事が期待されています。1 また、CBDはオピオイド依存で起こるの離脱症状の軽減にも役立ちます。
もう一つの代表的な効果に、オピオイド依存に陥った人の不安を大きく軽減する、抗不安作用があります。現在多くの研究者達は、CBDの不安レベルを軽減する力がオピオイド依存症を改善し、結果的に再発の可能性を減らすことができると考えています。具体的には、CBDが脳内にある5HT1-Aセロトニン受容体を部分的に活性化させ、気分の安定につながるといわれています。
最後に、CBDはオキシコンチンやバイコディンなどの他の薬物とは異なり、それ自体に依存性がないというメリットがあります。2
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依存症治療としてCBDを使用した際の副作用
CBDオイルを使用することによる副作用は、吐き気、下痢、眠気などですが、こうした症状はまれで、程度も依存症治療で使用される従来の処方薬に比べれば極めて軽度なものばかりです。CBDの副作用についての情報はこちらで詳しく説明しています。
依存症に対するCBDの投与量
依存症治療のためにCBDを使用するにあたって、適切な摂取量を知るにはどうすればいいのでしょうか。当サイトでは、CBDの専門家ライノフ氏とバーンバウム氏の著書「CBD:A Patient’s Guide to Medicinal Cannabis」の中で紹介されているステップアップ法を推奨しています。3
CBDの正しい摂取量についてより詳しく知りたい方は、CBDの摂取量の記事をご覧ください。
CBDで依存症を改善するには、どのように使用すればいい?
CBDは、オイル、タブレット、ベイプ、エディブルなど、さまざまな形態で販売されています。CBDオイルはこれらの中で最も広く使われているタイプですが、長く使っていくことを考えると、自分が最も使いやすいと感じるタイプを選ぶのが一番かもしれません。
CBDを使用した本態性振戦患者の体験談
雑誌『Men’s Health』に掲載された、首の怪我を負ったチェさん(仮名)の体験談を紹介します。チェさんは背骨の椎間板を脱臼してしまい、鎮痛のためオピオイドを含むオキシトシンを投与されました。程なくしてチェさんはオピオイド依存になってしまい、乱用していることに気づいた医師はすぐに処方を止めました。その後、別の方法で薬を入手したチェさんは、7年間にわたってオピオイド依存に苦しむこととなりました。カンナビスを吸うなどして脱却を図りましたが、オピオイドへの渇望は消えませんでした。そこで、新たな選択肢としてCBDの使用を始めたところ、依存症が改善されていきました。彼は、1日1回33mgのCBDカプセルを処方され、継続的に服用することで欲求が完全に消え、生活が正常に戻ったと言っています。4
依存症とCBDに関する研究で明らかになったこと
フリードベルト・ウェイス氏の主導によるCBD研究では、CBDが依存症に対して治療効果を持つという結果が示されました。5 この研究は、条件付きのコカイン依存症またはアルコール依存症のラットを対象に行われました。ラットには、CBDを混ぜたジェルを1週間毎日与え、一般的な依存症の再発のきっかけがあった時にどう反応するかを検証しました。
結果として、多くのラットが誘因となるきっかけに反応せず、CBDが再発リスクを減らすことを証明しました。さらに、CBDを摂取したラットは、依存症の症状である不安感や衝動性が抑制されていました。この研究結果は、CBDが依存症治療に有効であることを証明するの十分すぎる成果を上げたとして、高い評価を得ました。
結論として、長期的な薬物再発防止のための治療を受けずして依存症を克服する事は極めて難しいといわれている中で、CBDオイルがその最善の手段として大きな可能性を秘めているという事が言えるでしょう。
参考文献
- Foster, L. (2019). Understanding Addiction Relapse. [online] EverydayHealth.com. Available at: https://www.everydayhealth.com/addiction/understanding-addiction-relapse.aspx. [↩]
- Expert Committee on Drug Dependence (2018). CANNABIDIOL (CBD). [online] World Health Organization. Available at: https://www.who.int/medicines/access/controlled-substances/CannabidiolCriticalReview.pdf [↩]
- Leinow,, L. and Birnbaum, J. (2017). CBD: A Patient’s Guide to Medicinal Cannabis. North Atlantic Books. [↩]
- Volpe, A. (2019). Is Marijuana the Key to Solving the Opioid Crisis?. [online] Men’s Health. Available at: https://www.menshealth.com/health/a19607404/marijuana-drug-addiction-cbd-opioid-cocaine-use/ [↩]
- Gonzalez-Cuevas, G., Martin-Fardon, R., Kerr, T., Stouffer, D., Parsons, L., Hammell, D., Banks, S., Stinchcomb, A. and Weiss, F. (2018). Unique treatment potential of cannabidiol for the prevention of relapse to drug use: preclinical proof of principle. Neuropsychopharmacology, 43(10), pp.2036-2045. [↩]