痛みは人を衰弱させるものです。特に、顎関節症(TMJ)のような不快な痛みを伴う障害は、人生に大きな影響を与えてしまうほど深刻です。CBD(カンナビジオール)は、顎関節症をはじめとする様々な痛みを抑制する効果があり、ここ数年間で急速に認知と研究が進んでいる成分です。近年では、その有効性を裏付ける医学的研究が数多く行われてきています。また、使い安さ、向精神作用を持たない安全性の高さ、価格の手頃さ、合法性があることなどの理由から、このCBDを顎関節症などの治療に活用する人が増えています。
顎関節症とは
顎関節症の原因
顎関節症の原因は主に、関節炎を含む結合組織系の障害と、顎の損傷です。
特に、関節リウマチや変形性関節症などの関節炎と共に発症する事が多く、この場合には顎関節症の二次疾患として現れます。関節リウマチは、骨の関節を覆っている軟骨を標的とする関節炎です。
変形性関節症に関しては、より長い期間にわたって影響を与える事を除けば、軟骨がすり減るなどの特徴が顎関節症と酷似しています。
また、スポーツや暴力、事故などによる顎へのダメージも、顎関節症を引き起こす原因となります。さらには、習慣的な激しい歯ぎしりや食いしばりが顎関節症につながるという研究データもあります。
顎関節症の症状
顎関節症を患うと現れる最初のサインは、顎とその周辺の痛みです。耳、口、顔などの顎以外の部分が痛む場合もあり、顎関節症特有の頭痛が副症状として現れる事があります。
痛みの傾向としては、慢性的に続く場合や、食事の際などに顎を積極的に使ったとき鋭い痛みが走る場合があるなどさまざまですが、どの場合も基本的には噛む事が困難になっていきます。
また、咬筋痙攣も症状の一つです。咬筋痙攣自体は治療可能ですが、顎の筋肉が痙攣して痛むため、口を使うことがさらに困難になります。
顎関節症が及ぼす影響
顎関節症が日常生活に与える影響は、決して少なくありません。咬筋痙攣や痛みがある場合、食べたり飲んだりする事が難しくなり、さらに進行すると話す事にも支障をきたすため、社会生活で苦しい思いをする場面が増えるでしょう。
顎関節症が頭痛などの症状として現れている場合には、仕事など集中力を要する場面で影響を及ぼす可能性があります。また、顎関節症は見た目にも影響を与えます。患部を庇うために片側の筋肉だけ使い続けると、その側の筋肉だけが発達してしまうため、左右非対称に見えてしまうのです。
顎関節症ためのCBD
現在、家庭治療で顎関節症を治そうと考えている人の間で、CBD製品が大きな注目を集めています。製品のタイプは、CBDクリームやCBDオイルなど多様ですが、ほとんどの人は、より高濃度のCBDを含有しているオイルベースの製品を選びます。中濃度の1500mg(濃度15%)のCBDオイルボトルは、繰り返し起こる鈍痛を軽減するのに役立ちます。より強い痛みであれば、2500mg入りのCBDオイルボトルも販売されています。
慢性的な顎関節症やその他の痛みがあり、これまでCBD製品を使用したことがない人は、低〜中レベルの濃度のCBD製品を試してみる事をお勧めします。ただ、CBDに対する反応は体質や体内環境によって大きく変わる可能性があるため、まずは十分安全といえる少量の摂取から始めるといいかもしれません。濃度が低すぎて効き目を感じられなければ、より濃い濃度の製品に切り替えればいいだけですが、濃度が高すぎてしまうと効きすぎて健康を害してしまう恐れがあるので危険です。私たちは、レオナルド・ライノフ氏の著書である「CBD – A Patient’s Guide to Cannabis」の中で提唱している、ステップアップ方式を推奨しています。CBDの使用量についてより詳しく知りたい方は、当ウェブサイトの摂取量に関する記事をお読みください。
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CBDを顎関節症の治療に使用する方法
CBDオイルとCBDクリームは、顎関節症治療としてCBDを使用する上で最も適しているタイプの製品です。では、どのように使用すればいいのでしょうか?
CBDクリームは、スキンローションやクリームにCBDエキスが配合されている、シンプルな製品ですが、このタイプの製品は顎関節症だけでなくその他の多くの皮膚で起こる痛みに対して、大きな効果を発揮します。
使用方法としては、痛みのある患部に、保湿剤を塗るようにマッサージしながら塗ります。クリームの主な利点は、高い即効性と特定の部位に直接塗布できる利便性です。
CBDと心臓病薬
CBDは、心臓病薬の効果を大幅に低下させてしまう可能性がありますので、心臓病の薬を服用している方は、CBDを摂取する前に必ずかかりつけの医師に相談するようにしてください。
最後にCBDオイルの使用方法についてですが、一番一般的な方法は舌の裏に垂らす舌下摂取です。スポイトで数滴垂らしてから、飲み込む前に1分ほど口に含んで体内に吸収されるのを待ちましょう。この方法での適切なCBD摂取量は、体質やそのオイルの濃度、また体重によって異なるため、前述したステップアップ方式で最適な摂取量を調べる事をお勧めします。
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CBDが顎関節症を改善するメカニズム
CBDは、一言で言うと痛みのメッセージが脳に伝わらないようにする、神経遮断薬の様なものです。
人の体には、エンドカンナビノイドシステムという機構が備わっています。この機構の存在が知られる様になったのは、研究者たちが30年前にラットの体内にエンドカンナビノイド受容体を発見した事がきっかけでした。その後、さらなる研究によってエンドカンナビノイド受容体が人の体内にも存在し、カンナビノイドと相互作用できる環境が備わっている事が明らかになりました。
人の脳には、痛みを感じるための受容体を含む、様々な受容体があり、エンドカンナビノイドはその受容体を刺激したり遮断したりして管理する働きを持っています。CBDが顎関節症の痛みを軽減するのは、この働きによって痛みが遮断されるためです。
その他にもCBDが顎関節症の治療薬として期待されている理由があります。それはCBDの強力な抗炎症作用です。顎関節症の痛みと一見無関係の様に思えますが、実は顎関節症を発症すると、顎関節の周りの軟骨が摩耗したり劣化する事で関節の骨同士が接触してしまい、その結果周囲がダメージを負って炎症を起こすため、痛みをさらに悪化させているのです。したがって、関節の炎症を抑えることは、顎関節の痛みやその他の炎症性の痛みを和らげる事につながるのです。
また、CBDには関節炎治療としてだけでなく、予防薬としての利用価値がある事が研究で証明されています。関節炎の一種で、骨粗鬆症という、骨がもろくなってしまう病気がありますが、CBD製品は骨を強化し、骨折からの回復を助けるという非常に有力な研究結果があるため、この疾患に対しても大きな治療効果を発揮します。
予防は治療に勝るとは言ったもので、高齢者や家族に関節炎の兆候が見られる場合、CBD製品を定期的に摂取することで、この不快な痛みを伴う疾患を予防する事ができるかもしれません。
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CBDについての医学的研究
ここ数年の間に、顎関節症の鎮痛薬としてCBDが効果的だとする研究が多く発表されました。CBDは、痛み、不安、吐き気、発作などの多様な症状の緩和に効果があることがすでにわかっており、さらに驚くべき事に、がんに対しても治療効果があるという研究結果も存在します。
2011年に刊行されたBritish Journal of Pharmacology誌には、CBDが吐き気や嘔吐を和らげるとする研究結果が掲載されました。1 さらに、Epilepsy Behaviour誌に掲載された、2013年スタンフォード大学で行われた研究では、CBDが子供の発作の発生率を減少させるという非常に希望が持てる結果を残し、参加した子供とその家族に大きな利益をもたらしました。2
顎関節症に関しても、CBDの治療効果を調べた医学的研究は数多くあり、それらの研究結果によってより多くの人がCBDを顎関節症治療に活用したいと思う様になりました。2012年にJournal of Experimental Medicine誌で掲載された研究では、CBDは脳への痛みの信号を効果的に遮断するため、神経経路の遮断剤として働くと報告しています。3 この研究結果は、顎関節症の治療にCBDの使用を検討している人、特に長期的で恒常的な痛みと闘っている人にとって、大きな希望を与えるものでした。
また、European Journal of Painに掲載された研究は、顎関節症を含む多くの痛みを和らげるCBDクリームが炎症も同時に抑える効果も持っている事を証明し、関節炎や顎関節症を出来るだけ自然に治療したいと考えている人がCBDを使用するきっかけとなりました。4
まとめ
CBD製品は、カンナビスや喫煙者のイメージが強く、痛みを和らげるために使用するには抵抗があるという人も少なくないでしょう。しかし、実際にはそう言った悪い印象とは大きく異なり、極めて安全性が高い成分だと言われています。カンナビスには100種類ものカンナビノイドが含まれており、いわゆる「ハイ」と呼ばれる向精神作用をもたらすものは、その内のTHCというカンナビノイドであり、痛み止めに使われるCBDは、THCとはまったく別の成分です。この二つのカンナビノイドは異なる原子の配列を持っており、CBDに向精神作用がないのはこの違いのためです。
CBDの治療効果の多くは、すでに多面的な研究によって実証されています。中でも、てんかんの子供に対しては、非常に顕著な治療効果が認められています。そして、顎関節症のような症状で痛みに苦しんでいる人にも有効に働いているという報告も多数あります。
CBDが効果的であることは確かですが、常に慢性的な痛みに悩まされている方に関しては、常に医師と協力して症状と向き合っていく事を強くお勧めします。そうした協力体制の元で、CBDを治療計画の一環として取り入れる事で安全で効果的に利用する事ができるでしょう。そうしてCBDを実際に使用するという事になれば、多くの場合オンラインショップでの購入という事になりますが、その際に処方箋は必要ありません。信頼できるブランドから安全なCBD製品を購入しましょう。
顎関節症へのCBD製品利用に関しては、現段階では十分な認知が進んでいるとは言えませんが、さらに研究が進めば治療形態が確立し、いずれは代表的な治療方法として認められる日が来る事でしょう。
参考文献
- Parker, L., Rock, E. and Limebeer, C. (2011). Regulation of nausea and vomiting by cannabinoids. British Journal of Pharmacology, 163(7), pp.1411-1422. [↩]
- Porter, B. and Jacobson, C. (2013). Report of a parent survey of cannabidiol-enriched cannabis use in pediatric treatment-resistant epilepsy. Epilepsy & Behavior, 29(3), pp.574-577. [↩]
- Xiong, W., Cui, T., Cheng, K., Yang, F., Chen, S., Willenbring, D., Guan, Y., Pan, H., Ren, K., Xu, Y. and Zhang, L. (2012). Cannabinoids suppress inflammatory and neuropathic pain by targeting α3 glycine receptors. The Journal of Experimental Medicine, 209(6), pp.1121-1134. [↩]
- Hammell, D., Zhang, L., Ma, F., Abshire, S., McIlwrath, S., Stinchcomb, A. and Westlund, K. (2015). Transdermal cannabidiol reduces inflammation and pain-related behaviours in a rat model of arthritis. European Journal of Pain, 20(6), pp.936-948. [↩]