世界保健機関(WHO)によれば、160人に1人の子供が自閉症スペクトラム症(ASD)をもっていると言われており、その有病率は年々上がっているため、今後一層ASDへの認知と理解が保護者の間で必要になってきています。その一方で、臨床研究においてASDの確固とした治療法は未だ見つかっていません。そうした中で、現在自閉スペクトラム症に高い医療効果があると注目されているのが、CBDです。
自閉スペクトラム症の子供にCBDを使用する際には、保護者がCBDとASDに関する知識を持つ事がとても大事です。現在、CBDがASDへの最善の治療法であることを明確に示したデータはありませんが、CBDがASD治療に有効であることを裏付ける事例証拠が多数存在します。1 Journal of Autism and Developmental Disorders誌に掲載された研究では、一部のカンナビノイド受容体がASDを制御する事と関連があると報告されています。2
自閉スペクトラム症(ASD)とは?
また、ASDは不安、睡眠障害、恐怖症、強迫性障害(OCD)など、多くの合併症を伴うことがあります。このように、ASD患者が抱える症状は多岐に渡りますが、驚くべき事にCBDはこれらの症状のほとんどを緩和する効果があるとされています。ASDの症状の中でもよく知られているコミュニケーション障害は、自傷行為、怒り、不安、その他の反復的な自己静 穏化などの行動を起こすため、最も苦しいと言われている症状の一つですが、CBDの鎮静作用がこの症状の改善に、効果的に働いてくれます。
CBDが自閉スペクトラム症(ASD)に働くメカニズム
CBDがASDの治療に役立つと言われている理由の一つとして、ASDの発症原因や脳の発達にはエンドカンナビノイドシステムが大きく関係している事が挙げられます。3 胎児の頃の環境要因で起こったゲノム変異は、エンドカンナビノイドシステム(ECS)の機能を阻害し、その結果、多くのASD関連の症状が引き起こされます。そのプロセスはまだはっきりと解明されてはいませんが、エンドカンナビノイドシステム受容体の不足が、ASDで起こる不安の原因であると研究者達は考えています。そのため、CBDはASD患者の不安を和らげるのに有効であると言えるでしょう。4
ASD治療にCBDを使用するメリット
CBDには鎮静作用があるため、自閉スペクトラム症(ASD)が原因で起こる特定の行動を正常化する働きがあります。実際に、不均衡になった脳内抑制性神経細胞のレベルを引き上げることで脳の抑制機能を向上させる事がわかっています。このことから、CBDは脳内のバランスを保ち、発作を軽減し、社会的行動を正常化する働きのある、極めて医療効果の高い成分だという事が言えるでしょう。
CBDをASDの治療に使用した場合、どんな副作用がある?
CBDは、世界保健機関(WHO)で人体に害のない安全な成分であると公表されています。5 ところが、効き目は個人差があるため、まれに副作用が出るケースがあります。CBDを使用する際には、副作用について正しい知識を身につける事が必要です。
エンドカンナビノイドシステムとASD
エンドカンナビノイドシステム(ECS)は、CBDとASDを結ぶ根幹となる機構です。ASDの症状の多くは、体内のエンドカンナビノイドシステム(ECS)の機能に異常を来す事で起こります。ECSは体内で以下のような、さまざまな調節機能を果たしています。
- 気分の変化
- 喜びと快感
- 記憶のコントロール
- 痛み
- 運動機能のコントロール
ECSが機能するために欠かせないエンドカンナビノイド受容体は、体内の大部分に存在しているため、体全体にこうした調節機能をもたらす事が可能で、ASDに効果的に働く鎮静作用も、CBDがエンドカンナビノイドシステムの調節機能を促進させることによるものです。
ASDのための、適切なCBD摂取量
これまでの事例報告やCBDの専門家によれば、CBDで過剰摂取が起こる可能性は極めて低いようです。それほど副作用が少なく安全な成分という事が、いくつかの研究で明らかになっています。しかしながら、効き目には個人差がありますので、まずは低用量から始めて、時間をかけて徐々に摂取量を増やしていくことをおすすめします。これは、どの量のCBDが自分に合っているかを効率的かつ正しく知るための最善の方法です。また、自分に最適な摂取量の目安を知るために、自分がどのような症状をどの程度持っているのかを理解する事も重要です。
摂取量については「CBDの投与量」で詳しく紹介していますが、基本的にはライノフ氏とバーンバウム氏によるによるステップアップ法に則っています。彼らの著書『CBD: A patient’s guide to Medical Cannabis』によると、マイクロドースと呼ばれる低用量から始める方法を取る事で、ASDの症状に効く最適な摂取量がわかるとされています。
CBDがASDにもたらす影響を調べた研究と結果
研究では、CBDに関する様々なデータが集められ、CBDの使用がASDの効果的な治療法であることを肯定する結果が示されています。
『USA Today』に掲載された記事では、CBDとASDに関する事例証拠として最も有力なデータとして、数年前にイスラエルで行われた子供のてんかんに関する臨床研究が紹介されました。6 この中で注目されたのは、ASDの子供の約30%がてんかんの特徴を持っているということでした。また、全体の70%が、CBDを使用することでASDの症状による不安感が軽減されていることが確認されました。
これらの研究を踏まえると、CBDがASDに苦しむ人々の救済として今後活用されていく事が大いに期待できます。
参考文献
- Chakrabarti, B., Persico, A., Battista, N. and Maccarrone, M. (2015). Endocannabinoid Signaling in Autism. Neurotherapeutics, 12(4), pp.837-847. [↩]
- Siniscalco, D., Sapone, A., Giordano, C., Cirillo, A., de Magistris, L., Rossi, F., Fasano, A., Bradstreet, J., Maione, S. and Antonucci, N. (2013). Cannabinoid Receptor Type 2, but not Type 1, is Up-Regulated in Peripheral Blood Mononuclear Cells of Children Affected by Autistic Disorders. Journal of Autism and Developmental Disorders, 43(11), pp.2686-2695. [↩]
- Zamberletti, E., Gabaglio, M. and Parolaro, D. (2017). The Endocannabinoid System and Autism Spectrum Disorders: Insights from Animal Models. International Journal of Molecular Sciences, 18(9), p.1916. [↩]
- Blessing, E., Steenkamp, M., Manzanares, J. and Marmar, C. (2015). Cannabidiol as a Potential Treatment for Anxiety Disorders. Neurotherapeutics, 12(4), pp.825-836. [↩]
- Expert Committee on Drug Dependence (2018). CANNABIDIOL (CBD). [online] World Health Organization. Available at: https://www.who.int/medicines/access/controlled-substances/CannabidiolCriticalReview.pdf. [↩]
- Schwartz, Y. (2017). Marijuana may be a miracle treatment for children with autism. [online] USA Today. Available at: https://eu.usatoday.com/story/news/world/2017/04/25/marijuana-pot-treatment-children-autism-cannabis-oil/100381156/ [↩]