国際骨粗鬆症財団(International Osteoporosis Foundation)によれば、ヨーロッパ、アメリカ、日本国内でおよそ7500万人が骨粗しょう症を患っているといわれています。1 また、女性のみでは世界全体で2億人が罹患しており、これは60代女性の約10分の1にあたります。
骨粗しょう症とは
骨粗しょう症の症状と原因
症状
初期段階においては、一般的には目立った症状は現れませんが、骨密度が低下して骨が弱くなると以下のような症状が起こります。
- 脊椎骨の骨折や脆くなったことによる腰痛
- 徐々に身長が低くなる
- 姿勢が前屈みになる
- 思った以上に簡単に骨折してしまう
主な要因
女性は、骨粗しょう症になりやすいと言われていますが、これは閉経後2、3年間で骨密度が急速に減少するためです。
その他の要因には以下のようなものがあります。
- 副腎の過剰なホルモン分泌
- 甲状腺の機能低下
- 性ホルモンの分泌量低下
- コルチコステロイドの長期にわたる使用
- 炎症性疾患やホルモン関連疾患などの他疾患による要因
- 標準以下のBMI値
- 大量の飲酒や喫煙
- 骨強度、骨密度、ホルモンレベルに悪影響を与える薬の高頻度の使用
CBDオイルが骨粗しょう症に効果があると言われる理由
過去数十年にわたる研究の末に、研究者達はついにCB1やCB2などのカンナビノイド受容体が、骨組織にも存在していることを突き止めました。これらの受容体は、骨の健康に極めて重要な役割を果たしていたのです。
そのうちの一つであるCB2受容体は主に、破骨細胞(骨を吸収する細胞)と骨芽細胞(骨を形成する細胞)の中に存在し、骨代謝の調節を行っていると言われています。生理学では、骨の健康を保つにはこの破骨細胞と骨芽細胞のバランス調整が不可欠だとされています。そのため、高齢になりこの2種類の細胞のバランスが崩れると、骨折や骨密度の低下が起こってしまうのです。
カンナビジオール(CBD)はこれらの受容体のアゴニスト(作動薬)ではありませんが、CB2受容体の間接的な拮抗剤として作用すると言われています。2 この受容体は、骨芽細胞の発現や破骨細胞の増殖抑制を行ったり、骨芽細胞を活性化したり増殖を促します。また、皮質内骨の形成を促進し、骨密度の低下を防ぎ、正常な骨密度を維持するなどの働きがあります。一方でCB1受容体は、活性化することでノルエピネフリンと呼ばれる化学物質を抑制する働きがあります。3
最近の研究では、カンナビジオール(CBD)オイルを摂取する事で、これらの受容体の機能を正常に保ち、症状を緩和させたり骨粗しょう症の進行を遅らせる事が明らかになりました。
CBDは、リキッド、ペースト、オイル、カプセル、ガムやキャンディー、軟膏、スプレー、ドロップなどさまざまな形態や濃度のものが販売されています。
CBDを骨粗しょう症に使用するメリット
これまでの長年にわたる研究で、CBDオイルやその他のCBD製品が骨粗しょう症に対して2つの明確な治療効果ががあることが明らかになっています。まず、CB2受容体とCB1受容体をマイナス方向に変調させる事で、アゴニストに結合する能力を低下させます。4 これは、一般的にはアントラージュ効果と呼ばれ、同様のカンナビノイド受容体として機能する他の化合物の効果を抑えることができることを意味します。
さらにCBDは、FAAHなどのいくつかの酵素を阻害して、これらのカンナビノイド受容体のもたらす効果を増強させる事ができます。研究者達は、CBDがこうした作用により骨に及ぼす健康問題のリスクを下げ、より健康な体を維持するのに有効であると結論づけています。
エンドカンナビノイドシステムと骨
前項でも触れた通り、エンドカンナビノイドシステム(ECS)には破骨細胞と骨芽細胞の活動制御という重要な役割がありますが、5 これは逆に考えれば、エンドカンナビノイドシステムに何らかの問題が発生すると、骨粗しょう症をはじめとするさまざまな症状を引き起こすという事です。実際、エンドカンナビノイドシステムが骨密度の増減を左右するという事を証明する研究結果もあり、6 それによると、脳内のエンドカンナビノイド受容体が不足すると骨のターンオーバー(生まれ変わり)が活発になると言われています。
こうした状況下では、体は常に古い骨細胞を「引退」させ続けますが、新しい骨細胞が十分に生産されないという状態が起こります。そこで、カンナビジオール(CBD)の助けによってカンナビノイド受容体が刺激され、エンドカンナビノイドが正常化して骨がバランスの取れたターンオーバーを行う事ができる様になるのです。
エンドカンナビノイドシステムは、基本的にカンナビノイド受容体で構成されており、外因性カンナビノイドであるCBDのようなカンナビノイド化合物によって活性化されます。一方、体内に自然に存在している内因性カンナビノイド(エンドカンナビノイド)は、基本的に数種類の酵素によって体内で生成・分解されることからエンドカンナビノイドシステムの重要な働きを制御する役割を担っていると考えられています。内因性カンナビノイド受容体の数が減ると、骨粗しょう症の発症につながると言われているのはそのためです。
骨粗しょう症にCBDオイルを使用する際の用量
ステップアップ方式
当サイトでは、CBDを安全かつ効果的に摂取する方法として、「CBD: A Patient’s Guide to Medicinal Cannabis」という本の中にある摂取方法を推奨しています。7 著者は、体重や体調に応じて摂取量を変える「ステップアップ方式」と呼ばれる摂取方法が有効であると述べています。より詳しいCBDの摂取方法については、ライノフ氏とバーンバウム氏の推奨する方法と、CBDの摂取方法の記事を参考にしてください。
CBDは本当に骨粗しょう症に効果がある?
フランスの科学者による研究で、人の骨には脳細胞よりも高いレベルのエンドカンナビノイドとリガンドが存在することが明らかになりました。8 また、アナンダミドと呼ばれる体内で自然に生成されるカンナビノイドが、骨組織に影響を与えている可能性が示唆されました。アナンダミドには、CB2受容体の結合を補助する役割があり、CBDがそのアナンダミドを模倣することで、骨粗しょう症患者の骨の健康を改善することもわかっています。
イドリス・アル氏による別の研究では、骨粗しょう症治療におけるカンナビノイド受容体の役割に焦点を当てました。9 その結果、CBDが骨代謝やリガンドにポジティブな作用をもたらす可能性が示唆されました。この様にカンナビノイド受容体を利用して同化療法や再吸収の阻害をするという作用を持つCBDは、骨折の治療に利用できる可能性があるということになります。
また、2015年に発表されたコーガン・ニーマント氏の研究によると、マウスにCBDオイルを投与したところ、骨が耐えられる最大負荷が大幅に増加しました。10 また、CBDの使用によって骨折や損傷を負った骨の治癒過程が早まっただけでなく、骨密度の低下を遅らせることができることが明らかになりました。
WHO(世界保健機関)は、カンナビジオールは安全性が高く、副作用もほとんどないと正式に発表しています。
参考文献
- International Osteoporosis Foundation (2019). FACTS AND STATISTICS. [online] Available at: https://www.iofbonehealth.org/facts-statistics [↩]
- Dhopeshwarkar, A. and Mackie, K. (2014). CB2 Cannabinoid Receptors as a Therapeutic Target—What Does the Future Hold?. Molecular Pharmacology, 86(4), pp.430-437 [↩]
- Reggio, P. (2010). Endocannabinoid Binding to the Cannabinoid Receptors: What Is Known and What Remains Unknown. Current Medicinal Chemistry, 17(14), pp.1468-1486. [↩]
- Hammell, D., Zhang, L., Ma, F., Abshire, S., McIlwrath, S., Stinchcomb, A. and Westlund, K. (2015). Transdermal cannabidiol reduces inflammation and pain-related behaviours in a rat model of arthritis. European Journal of Pain, 20(6), pp.936-948. [↩]
- Idris, A. and Ralston, S. (2012). Role of cannabinoids in the regulation of bone remodeling. Frontiers in Endocrinology, 3. [↩]
- Bab, I. and Zimmer, A. (2008). Cannabinoid receptors and the regulation of bone mass. British Journal of Pharmacology, 153(2), pp.182-188. [↩]
- Leinow,, L. and Birnbaum, J. (2017). CBD: A Patient’s Guide to Medicinal Cannabis. North Atlantic Books. [↩]
- Whyte, L., Ford, L., Ridge, S., Cameron, G., Rogers, M. and Ross, R. (2012). Cannabinoids and bone: endocannabinoids modulate human osteoclast function in vitro. British Journal of Pharmacology, 165(8), pp.2584-2597. [↩]
- I. Idris, A. (2010). Cannabinoid Receptors as Target for Treatment of Osteoporosis: A Tale of Two Therapies. Current Neuropharmacology, 8(3), pp.243-253. [↩]
- Kogan, N., et. al (2015). Cannabidiol, a Major Non-Psychotropic Cannabis Constituent Enhances Fracture Healing and Stimulates Lysyl Hydroxylase Activity in Osteoblasts. Journal of Bone and Mineral Research, 30(10), pp.1905-1913. [↩]