CBDが人の不安やうつ、痛みなどを軽減したり、がん治療に役立つと結論づけた研究が数多くあるという話を、どこかで耳にした人は多いと思いますが、123 ペットの猫に対してもCBDオイルによる同等の治療効果が得られるということは、実はあまり知られていません。4
近年では、かつてのようなヘンプ製品に対する誤解や良くない印象が払拭されてきているため、猫用のCBDに関心を持つペットオーナーが年々増えています。そうした人たちがまず初めに調べるのは、CBDオイルがどういったメカニズムで猫の健康を改善し、より幸せな生活を支えてくれるのかということです。本稿では、猫向けのCBDオイルについて知っておくべき全情報を紹介いたします。
CBDが猫の健康を改善するメカニズム
猫の身体には、人と同様エンドカンナビノイドシステムが備わっています。これは、エンドカンナビノイドシステムに作用する化合物であるCBDが、猫にも作用する事を意味します。CBDの主な特徴として、日常的な気分や快適さを左右する慢性疾患の治療に役立つ事と、特定の症状を未然に防ぐ予防効果が挙げられます。つまり、CBDはすでに患っている疾患への治療と、病気予防の両方の側面で猫の健康をサポートしてくれるのです。猫にCBDを使用するメリットは、他にもたくさんあります。
痛みと腫れを軽減する
痛みや腫れは、脳内のバニロイドと呼ばれる受容体によって制御されており、人、猫、どちらの脳内にも、この受容体が存在します。CBDが痛みを和らげ、炎症を抑えることができるのは、CBDがこの受容体を主なターゲットとし、5 活性化しないように制御する働きがあるからです。
こうして無力化された受容体は、それ以上患部に痛みや腫れを引き起こす信号を送らなくなり、痛みと腫れが次第に収まっていくのです。
うつと不安を和らげる
うつと不安感は、どちらも脳内のホルモンバランスが乱れる事によって起こるとされています。こうした症状に苦しむのは人間だけだと思われがちですが、実は猫も同様に、うつ状態に陥ったり不安を感じたりすることがわかっています。6
人間と猫どちらにも備わっているエンドカンナビノイドシステム(ECS)は、睡眠、食欲、気分を調節する働きを持っています。そのため、このシステムを正常化してくれるCBDを使用することで、猫のホルモンバランスが正常なレベルに戻り、うつ状態や不安感を和らげることができるのです。
また、CBDは猫の脳内にあるセロトニン受容体とアデノシン受容体を刺激し、7 長期的な幸福感をもたらしてくれることが期待できます。さらには、不安やうつだけでなく、恐怖心や不安定な気分を改善することにも役立ちます。
例えば、あなたの猫ちゃんが車に乗るのを嫌がった時にCBDを使用すれば、恐怖心が和らいで安全に移動することができます。また、分離不安症、大きな音への過剰反応、来客への恐れなどを抱える猫ちゃんにも、大きな症状の改善が見込まれます。
猫の不安改善にCBDを使用しても大丈夫?
CBDにはいわゆる「ハイ」な状態を引き起こす向精神作用がありません。そのため、安心してペットにお使いいただけます。猫の不安感は、感情的な理由、もしくは生物学的な理由から生まれる言われており、繊細な生き物として有名な猫は、この感情に悩まされがちな動物なのです。
前述した通り、猫も人間と同様にエンドカンナビノイドシステムを持っているため、気分、痛み、炎症、不安、睡眠サイクル、そして全体的な免疫力などを調整するエンドカンナビノイドシステムの機能を増進するCBDオイルは、猫にとっても有益だといえるでしょう。
2016年に行われた研究では、CBDに含まれるカンナビノイドが様々な薬効を持っていると結論づけ、獣医学におけるカンナビノイドの使用への期待が高まりました。このことは、実験室の中だけではなく、実際にペットの動物を対象とした様々なテストでも実証されています。
人向けのCBDと猫向けのCBDはどう違う?
猫用のCBDといっても、実は人用に作られたCBDオイルのパッケージを変えただけじゃないの?と思う人がいるかもしれません。確かに、そうしたことをしているブランドがないとも言い切れません。
しかし、猫用のCBDには、以下の2つの点で成分に決定的な違いがあるため、これは考えにくいでしょう。
- テルペンが除去されている
- 香料が添加されている
1998年にオクラホマ州立大学の動物臨床医学研究所が行った研究によると、一部のCBDオイルに含まれるテルペン類は猫にとって悪影響を及ぼし、場合によっては死に至るほどの強い毒性があることが報告されました。8 この問題に関する研究は現在も行われていますが、現時点では多くのブランドが安全のために、動物用CBD製品からテルペンを完全に除去するプロセスを取り入れています。
また、米国食品医薬品局は、誤って使用されないように人間用の食品や医薬品とペット向けの同様の製品のラベルをはっきりと区別できるような表示にするように厳格な基準を設けています。
CBDオイルには通常、猫が好む特殊な香料が添加されています。これによって、食欲が刺激され、自発的にCBD製品を口に入れてくれるようになります。とはいっても、使用されている香料はCBDの効果に影響を及ぼすものではありません。
Can I give my cat the same CBD oil which I use?
人間用と猫用のCBDオイルは同じ原料から作られているため、前述した2点を除けば基本的には同じものです。現在、CBD製品を取り扱うCBDブランドは数多くありますが、標準的な二酸化炭素抽出法で製造された高品質なヒューマン・グレード(人向けと同等の品質を持った製品)のCBDオイルであれば、猫に対しても十分安全に使用できるでしょう。また、標準品質のCBDオイルであっても、基本的には汚染物質が含まれないように厳重な品質管理の下で製造されています。
CBDのベースとなる精油が出来上がると、人間の好みに合わせてテルペンや香料などの補完成分が加えられていきますが、こうした成分の中には、動物にはいい影響を及ぼさないものも含まれている可能性がありますので、まずはどういった成分が添加されているのかを成分表を見て確認しましょう。また、猫の体重によって摂取量も変わるので、動物に適切なCBD摂取量を調べる事も必須です。
米食品医薬品局の設けた基準では、人間向けとペット向けの製品それぞれに、適切な表記をすることが義務付けられており、ラベルには、内容量と数、1回分に含まれるCBDの量、THC含有量、成分表、製造日、有効期限が明確に記されていなければなりません。この表記を見て、キャリアオイルとテルペン以外の添加物が含まれていなければ、猫への使用は問題ないといえるでしょう。
ただ、同じ製品であっても、自分が使用するものとペットが使用するものは、別々に保管する必要があるでしょう。
猫向けのCBDには副作用がある?
CBDオイルを猫に使用しても安全?
猫にCBDを与える前に、飼い主はCBDによって生じるリスクや副作用について十分に理解しておく必要があります。これまでに、CBDを猫に使用した事によって深刻が副作用が現れたという報告例はありませんが、CBDを与えた直後、鎮静効果が過度に作用したというケースはまれに見られるようです。
また、胃腸への影響も、こうした製品を使用した場合に起こりやすい副作用の一つです。通常、飼い主がこの異変に気づくのは、CBDを猫の食事に取り入れ出した直後です。こういった副作用を避けるためにも、出来る限り低用量から摂取を始めてください。
関連記事:CBDの副作用
CBDは猫の攻撃性を抑える
猫は、他の動物や他の猫、あるいは他の人に向けて攻撃性を剥き出しにすることがあります。猫の過度な攻撃性を抑えるためにCBDオイルを使用することを検討しているのであれば、攻撃性にはいくつかの段階があることを知っておく必要があります。多くの場合、猫の攻撃性は感情的な仕草、行動、ボディランゲージなどで表出し、甲状腺機能亢進症、てんかん、関節炎、その他の持病がこうした攻撃的な行動を引き起こす場合があると言われています。
猫向けのCBDオイルは、様々な症状による痛みやいら立ちを和らげてくれることが明らかになっており、910 さらには、高い鎮静作用と抗炎症作用によって、上記のような持病からくる猫の攻撃性を大幅に抑えることができるでしょう。1112
腎臓病の猫のための猫用CBDオイル
あなたの猫ちゃんが、腎臓病で無気力、嘔吐、食欲不振に陥ってしまっているのであれば、CBDオイルは、そうした症状を改善するの手助けになるかもしれません。ある研究によると、CBDは慢性的な神経障害性疼痛を軽減しながら腎臓病の治療を手助けことがわかっています。通常、猫の急性腎臓病は、早期に発見されれば治療可能と言われていますが、13 進行度によっては治療が困難になるため、適切な治療方法が変わってきます。残念な事に、CBDオイルは腎臓病を根本から治療することはできませんが、症状を軽減することは可能です。
がんの猫のためのCBDオイル
あなたの愛猫ががんと診断されてしまい、それがつい最近のことであれば、CBDオイルで改善が見込めるかもしれません。CBDは、身体が腫瘍細胞の成長と拡散を食い止めるサポートをし、さらにがん細胞を直接破壊する力も持っているという、14 希望が持てる研究結果が複数発表されています。15 ただ、飲み合わせの問題や適切な摂取方法などの問題があるため、猫にCBDを与える前には、必ず獣医に相談しましょう。
皮膚病の猫のためのCBDオイル
猫と犬は、同じ種類の皮膚疾患にかかると言われていますが、それは猫が犬と同じリスク因子にさらされているからです。猫の皮膚疾患に伴う症状としては、炎症、かさぶたや淡い斑点などがありますが、CBDオイルには高い抗炎症作用があるため、こうした症状を持つ様々な皮膚疾患の治療に役立ちます。16
猫の下部尿路疾患に対するCBDオイル
全米獣医師会(AVMA)の報告によれば、猫下部尿路疾患(FLUTD)は、猫の膀胱と尿道に影響を及ぼす病気で、飼頻尿、排尿時の痛みや鳴き声、血尿などのサインに飼い主が気付く事で発覚します。
また、トイレ以外で排尿したり、性器を過剰に舐めるなどの異常行動がみられた場合も猫下部尿路疾患が疑われるので、すぐに動物病院に連れていきましょう。
この疾患の原因には感染症、膀胱結石、炎症などがあり、人間の場合と非常に似ていると言われています。
猫用のCBDオイルには抗炎症作用があり、痛みや炎症を極めて効果的に和らげることができます。
抗炎症作用は、CBDがもつ多くの治療効果の中で最も広く知られている効果です。ある研究によると、CBDは炎症の原因であるマクロファージやミクログリア細胞に向けて免疫抑制の効果を発揮し、それによって炎症が抑えられます。また、CBDはグリシン受容体を活性化させる事で、炎症に伴う慢性炎症性の痛みを軽減してくれます。
こうした作用機序により、CBDオイルはこの病気で起こる炎症を和らげて安心感を与えると共に、痛みも軽減されて病状が改善していくのです。
猫にCBDを与えてどんな効果が期待できる?
CBDを猫に使用する場合、2つの考え方があります。
- 健康補助食品として使う
- 治療目的で使う
まず、健康補助食品として使用する場合、少量のCBDオイルをおやつやキャットフードに混ぜて与えます。CBDは、屋内で暮らすペットが陥りやすい様々な身体的または心理的な健康バランスを調節する働きがあるので、猫の毎日の健康維持に役立ちます。
もう一つは、治療目的としてCBDを使用するという考え方です。治療目的で動物にCBDオイルを使用することは、すでに多くの獣医学的研究で明らかになっており、炎症、FLUTD、不安、恐怖、感染症、腹部膨満感などの様々な疾患や症状に治療効果が期待できます。また、CBDオイルは痛みを抑え、心を落ち着かせる効果もあるので、睡眠サイクルを改善するのに役立ちます。
猫の気分の落ち込みは、症状としてはっきり現れないまでも、過剰な毛づくろいや毛づくろい不足、普段以上に鳴き声を上げる、丸まって動かない、人から隠れる、遊びに無関心になるといった、行動や状態の変化として現れることがあります。CBDオイルの鎮静効果は、こうしたサインで表される猫の不安や精神的不調を改善してくれるので、愛猫の心の健康を取り戻すのに大いに役立ってくれるでしょう。
猫にはどのくらいの量のCBDを与えるべき?
猫用のCBDオイルを食事に取り入れる際には、最初から大量に与えるのでなく、少量から慎重に与えていきましょう。
猫用CBDオイルの与え方
CBDオイルを猫に使用する場合、食事にCBDオイルを数滴垂らして混ぜる与え方をお勧めします。そうすることでCBDの独特な味や香りをカモフラージュでき、残さずにしっかりと摂取させることができます。より詳しいCBDの用法・用量についてはこちらをご覧ください。
猫がCBDオイルを過剰摂取(オーバードース)する可能性は?
CBDは、多く摂取すればするほど期待する効果が見込めると思っている人は多いと思います。
冒頭で紹介したように、私たち人間と猫には、エンドカンナビノイドシステムという機構が備わっており、この機構を補助する働きを保つCBDは、多少多く摂取しても健康上問題が起こらないような気もしますが、大事な猫ちゃんに万が一のことが起きないためにも、使用する際は常に獣医に相談し、猫の病状、体重、年齢、体格など調べた上で適切な投与量を決定するのが良いでしょう。また、動物病院に相談することで、CBDを猫に使用する目的もはっきりと定まるでしょう。
本題の過剰摂取についてですが、CBDオイルには陶酔作用がないため猫がハイになる心配はありませんが、味や匂いのせいで摂取を嫌がるかもしれません。そうなると、そもそもCBDを与えること自体を諦めなくてはいけなくなってしまうので、
まずは猫が嫌がらないような極少量から始めて、徐々に徐々に毎回の量を増やして慣れさせていきましょう。もしCBDの味になかなか慣れてくれないとしても、辛抱強く待ってあげましょう。万が一、摂取後に興奮している様子を見せた場合は、摂取量を増やすのをやめ、様子を観察しましょう。その時の様子をメモに取ることも忘れないでください。
まとめ
本記事が、猫用のCBDの購入を検討している方にとって、さまざまな疑問を解消できる内容となっていれば幸です。
カンナビス製品は、これまでも多くの誤解や間違った認識を持たれてきました。猫を飼う人の中には、そうした誤った知識によって猫へのCBDの使用を危険だと考えている人も数多くいます。さまざまな研究によってその安全性と治療効果が認められるようになった今日、そうした誤解が払拭されてより多くの飼い主がCBDに対して関心を持ってくれることを願っています。
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