カンナビスは、あらゆる病気を治療することのできる可能性を秘めている成分です。カンナビスに含まれる精神活性作用を持たない成分の一つであるカンナビジオール(CBD)は、ALSを含む多くの疾患に対して治療効果を持つ事が、これまで行われてきた様々な研究で明らかになっています。1
ALSとは?
ALSという略称で知られている筋萎縮性側索硬化症は、運動神経細胞が変性することで筋肉が萎縮し、動作が困難になる神経・筋疾患です。2
運動神経細胞とは、脳から送られる運動の指令を筋肉に伝達する役割を持つ神経細胞のことで、ALSを患うとこの運動神経細胞が影響を受けるため、この指令が身体中の筋肉に伝達されなくなってしまいます。一言で言うとALSは、体の運動プロセスに大きな影響を与え、自分の思い通りに動けなくなったり、体の一部が意思と違う動きをしてしまったりする、運動機能に問題が起こる病気です。
カンナビス専門の医療機関であるカラパ医院によると、ALSと診断された人の余命は限られているといわれているものの、受ける治療によって長くも短くもなります。ALSの症状には、言葉の乱れ、継続的な筋力の低下、こむら返りや筋肉の不随意運動、筋肉のけいれんなどがあります。
筋萎縮性側索硬化症は、遺伝子の突然変異が原因である事がわかっており、ほとんどの場合家族から受け継いだ遺伝子によってALSが発症するといわれています。その他の要因としては、高齢者におけるALSの罹患率は若年者に比べて高いため、年齢もリスク要因の一つだと言えます。また、ALSは女性よりも男性が罹患する割合が高いという報告があります。3
CBDがALSの症状を改善するメカニズム
CBDには、ALSの症状に対して以下の様な効果があります。
- 唾液の分泌抑制:ALSを患うと筋肉の動きをコントロールすることが難しくなりますが、口の筋肉もその例外ではなく、舌や口周りの筋力が衰えることで口の中に唾液が溜まり過ぎてしまいます。
- 筋弛緩作用:これは、体の筋肉が頻繁に収縮を繰り返してしまうALSの症状とは逆の作用で、CBDを摂取することによって、体がピクピクするといった筋収縮を抑える事ができます。
- 鎮痛作用:筋萎縮性側索硬化症によって神経と筋肉が機能不全を起こすと、患部に強い痛みが現れます。CBDには、このような辛い痛みを和らげる効果があります。
- 睡眠の質の向上:ALS患者の多くは、その症状によって睡眠障害に悩んでいますが、CBDは、この記事でも触れている通り、睡眠を促す効果があるため、この点においてもALS治療にふさわしいといわれています。
- 食欲増進:食欲不振を伴う疾患は多く、ALSも同じく、食欲を減退させる場合があります。CBDを摂取すると食欲が正常な状態へと戻っていくため、ストレスなく食事を行う事ができる様になるでしょう。4
エンドカンナビノイドシステムとALSの関係性
CBDは、ALS治療において酵素の働きに大きな作用をもたらします。前述の通り、ALSは運動神経細胞が死滅していく疾患ですが、これは、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)と呼ばれる酵素が、運動神経細胞の活動時に生じる老廃物を十分に除去できず、その老廃物が細胞内に蓄積していくことで起こります。老廃物が細胞内から除去されないと、運動神経細胞のDNAが深刻なダメージを受けてしまいます。CBDには抗酸化作用があるため、酵素の働きを助けることで細胞内に蓄積される老廃物の量を減らします。5
CBDをALS治療として使用する方法
当然ではありますが、CBDをALS治療の目的で使用する際には、医師と十分に話し合った上で使用を開始するようにしてください。適切なCBDの摂取量は、目的や状況によって変わります。例えば、ターゲットの疾患の初期段階にある場合の摂取量は、長期にわたってその病気と付き合っている人と比べて少なくなるでしょう。また、痛みの度合いも人によってそれぞれで、それほど痛みを感じていないという場合には当然摂取量が少なくなります。この様に、自分の病状にあった最適な量のCBDを摂取する事で、最大限の効果を得る事ができるでしょう。
最適なCBDの摂取量を知るためには、自分の症状の重さや体質などを考慮に入れる必要があります。その上で、まずは低用量から始めて、徐々に量を増やしながら反応を見ていく方法で自分にあった摂取量を探るという方法が推奨されています。これは、ジュリアナ・バーンバウム氏とレオナルド・ライノフ氏の共著「CBD:A Patient’s Guide to Medicinal Cannabis」の中で紹介されているステップアップ方式という摂取方法で、6 ALSの場合に関しても、著者はこの方法に従ってマイクロドース(低用量)から始めることを推奨しています。マイクロドースについて、またCBDを正しく摂取する方法についての詳細は、CBDの摂取量に関する記事をお読みください。
ALSとCBDに関する医学研究
カプラン医院によるCBDのALSに対する治療効果に関する発表によると、スペインのコンプルテンセ大学が実施した研究で、ALSを持つマウスにCBDオイルを投与したところ、病気の進行が遅くなったという結果が報告されました。7
また、CBDオイルが筋肉の動きを管理する化学物質の分解速度を上げるなど、神経系の機能調整を助けるという結果も出ています。8
これらの研究結果で明らかになったCBDの効果だけを見てみても、CBDがALS治療に対していかに大きな治療効果を持っているかという事がわかります。以上のことから、CBDはALSの諸症状を治療するのに有効であると言えます。
まとめ
結論として、CBDはALSの症状軽減に役立つ事がわかりました。ALSは辛い痛みや不快感を伴う疾患です。この疾患を患う人が痛みや不快感に苦しむ事なく少しでも長く生きられるような治療方法を確立していくことは、今後の医療分野における大きな課題です。CBDオイルは、痛みを和らげ、筋肉を弛緩する効果があります。適切な使用方法を守ることで、こうした効果を最大限に得る事ができます。CBDは天然成分であるため、他の処方薬や治療法を併用することも可能です。ただ、危険な飲み合わせもあるため、使用する際は必ず医師に相談する様にしてください。
参考文献
- Kogan, Natalya M., and Raphael Mechoulam. „Cannabinoids in health and disease.“ Dialogues in clinical neuroscience 9.4 (2007): 413. [↩]
- Gastl, R., and A. C. Ludolph. „Amyotrophe Lateralsklerose.“ Der Nervenarzt 78.12 (2007): 1449-1459> [↩]
- Gastl, R., and A. C. Ludolph. „Amyotrophe Lateralsklerose.“ Der Nervenarzt 78.12 (2007): 1449-1459 [↩]
- Carter, Gregory T., et al. „Cannabis and amyotrophic lateral sclerosis: hypothetical and practical applications, and a call for clinical trials.“ American Journal of Hospice and Palliative Medicine® 27.5 (2010): 347-356. [↩]
- Kendall, Debra A., and Guillermo A. Yudowski. „Cannabinoid receptors in the central nervous system: their signaling and roles in disease.“ Frontiers in cellular neuroscience 10 (2017): 294. [↩]
- Leinow,, L. and Birnbaum, J. (2017). CBD: A Patient’s Guide to Medicinal Cannabis. North Atlantic Books. [↩]
- Fernández-Ruiz, Javier, María A. Moro, and José Martínez-Orgado. “Cannabinoids in neurodegenerative disorders and stroke/brain trauma: from preclinical models to clinical applications.” Neurotherapeutics 12.4 (2015): 793-806. [↩]
- Kendall, Debra A., and Guillermo A. Yudowski. “Cannabinoid receptors in the central nervous system: their signaling and roles in disease.” Frontiers in cellular neuroscience 10 (2017): 294. [↩]