エンドカンナビノイド・システムは、身体を健康に保つのに最も重要な役割を果たしている生理機能です。エンドカンナビノイドと受容体は、臓器、免疫細胞、分泌腺、結合組織、脳など、身体のさまざまな部位に存在しています。エンドカンナビノイド・システムは、恒常性を司ると言われています。つまり、外部からの影響を受けても、内部環境を一定に保とうとする働きを持っているという事です。
エンドカンナビノイド・システムの構成要素
エンドカンナビノイド・システムを構成する要素の中に、数種類の代謝酵素があります。これらの代謝酵素は、役目を果たしたエンドカンナビノイドを分解してくれます。エンドカンナビノイドは、小さな脂質由来の逆行性神経伝達物質で、カンナビノイド受容体を刺激する性質を持っています。これらの受容体は、細胞の表面に存在しています。
エンドカンナビノイド・システムの重要性
エンドカンナビノイド・システムは、以下の調節を行います。
炎症
炎症は、物理的な損傷や感染を受けた際に免疫機能によって自然に、そして自動的に起こる防御反応です。これは、損傷を受けた組織や病原体を取り除く事が目的ですが、損傷がひどくならないように、患部の炎症を調節する必要があります。免疫疾患や炎症は通常、免疫機能が過剰に働いた結果として起こると言われています。
エンドカンナビノイド・システムは、この炎症を起こす信号を制限し、抑制するので、炎症が最小限に抑えられ、結果として患部の痛みを和らげる事が出来るのです。
脳細胞の発火
脳細胞は通常、電気信号をその他の神経細胞に送ることでコミュニケーションをとっています。どの神経細胞も、常にパートナーの細胞に耳を傾け、信号を発するタイミングを見計らっています。神経細胞が過剰に信号を受け取る事は、望ましくありません。信号を多く受けすぎると、神経細胞が毒性を持つようになるからです。
エンドカンナビノイドには、脳細胞の発火を調整する非常に重要な役割があります。過活動状態の神経細胞は、エンドカンナビノイドと連結します。それと引き換えに、エンドカンナビノイドは過活動状態の神経細胞に戻り、冷却機能を持つ神経細胞を放出するCB1受容体と結合します。
カンナビノイドとは?
カンナビノイド受容体
カンナビノイド受容体は、細胞膜をはじめ、体のほぼすべての場所に存在しており、最も一般的な受容体系と言われています。活性化されたカンナビノイド受容体は、多くの生理的プロセスを発現させます。代表的なカンナビノイド受容体として知られるCB1は、臓器、分泌腺、生殖腺、結合組織、免疫系の中に存在しています。もう一つの代表格であるCB2受容体は、免疫系と、それと関係する部位の中に存在します。CB1とCB2受容体は、多くの組織に分布しており、様々な作用を生み出す事に使われています。また、これらの受容体だけでなく、まだ明らかになっていないカンナビノイド受容体も数多くあると言われています。
代謝酵素
代謝酵素は、使用済みのエンドカンナビノイドを分解してくれる働きを持っています。主な酵素としては、2-AGの分解に使われるMAGLと、アナンダミドの分解に使われるFAAHの2つがあります。これらの酵素は、エンドカンナビノイドが必要な時に分泌される事を促しますが、本来の寿命よりも早く分解をしてしまいます。この事から、エンドカンナビノイドは従来のより長い期間持続する神経伝達物質やホルモンのような他の情報伝達物質とは、大きく異なる性質を持っていると言えます。
エンドカンナビノイド・システム受容体はどのように作用する?
エンドカンナビノイド・システムは、無数の細胞受容体で構成されており、体内で起こっているプロセスをモニターしています。このシステムが、痛み、免疫機能、記憶、気分、睡眠などの調節を行っています。
カンナビノイド受容体 の働きには、以下の様なものがあります。:
酵素の活動を支える
酵素は、体内で起こる多くのプロセスに不可欠な成分です。そして、そのプロセスの内で酵素が特に大きな役割を果たしているのが、エンドカンナビノイド・システムなのです。酵素は、体内にあるエンドカンナビノイドを常にモニターしています。通常、酵素は特定の時間内でエンドカンナビノイドを調整していますが、身体に悪影響を及ぼすほどのエンドカンナビノイドの過剰な分泌を検知すると、そのリスクを抑えるために調節を行います。カンナビノイド受容体は、活発で健康なエンドカンナビノイドから、記憶や気分などの重要な体内プロセスを制御するための情報を受け取り、伝達することができます。
情報伝達チームを結成する
カンナビノイド受容体は、体内の作動体に即座に反応します。通常は、受容体が作動体から情報を受け取ると、カンナビノイドの機能向上のための数々のプロセスが誘発します。
ヒトの体には、2つの受容体が存在します。カンナビノイド受容体タイプ1(CB1) は、神経内に集中し、カンナビノイド受容体タイプ2(CB2) は神経系、消化器系の免疫機能に作用します。
これらの受容体の間を行き来するのがエンドカンナビノイドの役割ですが、エンドカンナビノイド・システムが正常に機能するためには、健康なエンドカンナビノイドが豊富に体内にある事が不可欠なのです。エンドカンナビノイドは、オメガ3脂肪酸を多く含む食品から摂取する事ができると言われています。
受容体が体内に不足するとどうなる?
受容体の不足は、以下の様な体の異常を引き起こします。
- 偏頭痛
- パーキンソン病
- アルツハイマー
- 多発性硬化症
- 動作緩慢
- うつ病
- セロトニン
- ドーパミン濃度の低下
実際にこれらの症状に見舞われた場合は、適切な診断と治療を行ってくれる医療機関を受診する事をお勧めします。上記の様な症状が見られた場合は、受容体不足が関係している可能性があります。
CBDとエンドカンナビノイド システムに関する研究
医学雑誌『Pain』に掲載された研究では、CBDの変形性関節症への鎮痛効果に関する調査が行われました。実験では、変形性関節症のラットにCBDが投与され、その結果被検体の痛みが緩和されました。
米国国立薬物乱用研究所とストーニーブルック大学の共同研究では、エンドカンナビノイド・システムが依存症と痛みを取り除くのに不可欠な生理的なプロセスと関わりがある事がわかりました。
まとめ
エンドカンナビノイド・システムは、気分、ストレス、免疫機能、神経系などをはじめ、様々な体内のプロセスが正常に働く手助けをしてくれる、ヒトの体に無くてはならない必要不可欠な機構です。エンドカンナビノイド・システムを安定させる事が、健康な身体を維持するのに最も大事な事なのかもしれません。