当サイトではこれまで、CBDが有効に働く疾患として、多発性硬化症、パーキンソン病、薬物離脱症などを取り上げてきましたが、同じ神経系に異常をもたらす疾患である本態性振戦には、CBDはどの様に作用するのでしょうか。
本態性振戦は、この疾患を患っている家族から遺伝的に受け継がれるか、前述した疾患の副症状として現れる事がわかっています。
CBDは、これらの本態性振戦の原因となる多発性硬化症、パーキンソン病、薬物離脱症に対して大きな治療効果を発揮する事が医学的に証明されているため、本態性振戦に対しても何らかの改善が期待されています。本稿では、CBDと本態性振戦について詳しくご紹介いたします。
CBDは、カンナビス植物(別名ヘンプ)由来のカンナビノイドで、向精神作用を持たないため、使用に伴うめまいや多幸感などの好ましくない作用を引き起こす事がありません。治療効果は多岐にわたりますが、毒性は非常に少なく副作用が起こる事も稀です。
本態性振戦とは
ただ、軽度の振戦であれば日常生活に影響はありませんが、重度の場合、日々行う体の動作が思う様に出来なくなり、様々な場面で不都合を生じてしまうので、診断は慎重に行われる必要があります。
前述したように、振戦はさまざまな部位に現れるため、震え方も多様です。本態性振戦の最も一般的な症状は、以下の通りです。
- 文字を書いたり、物を持ったり、手を使う際に起こる、手や腕の顕著な震え
- 頭や首が上下左右に揺れるなどの不随意運動
- まぶたの痙攣
- 舌や声帯の震えにより、話すときに声が震えて聞こえる
- 体幹、脚、足の震えにおける異常な歩行やバランス感覚の喪失
本態性振戦は、通常、40歳以上に見られる症状で、家族内で発症するケースが多いため、遺伝が大きく関係していると言われています。罹患した人の家族に本態性振戦の患者がいる場合は 「家族性振戦」 と呼ばれ、発症した両親の子供は50%の確率で本態性振戦の遺伝子を引き継ぐと言われています。
従来の本態性振戦の治療法
本態性振戦を100%完治させる治療法は未だ確立されていませんが、医療機関ではいくつかのアプローチで治療が行われています。例えば、抗てんかん薬、脳深部刺激(DBS)として知られる脳外科手術、視床の組織を破壊することを目的とした超音波MRI治療などが主な治療法です。
これらの治療法は一定の成果を上げてはいますが、侵襲性があり費用も高いため、さまざまな面でリスクの大きい治療法といえるでしょう。
CBDと本態性振戦 – 代替療法
CBDオイルは、本態性振戦のためのより侵襲性の低い治療薬として、大きな可能性を秘めています。カンナビノイドであるCBDの筋肉弛緩作用、発作を鎮める作用については、すでに数多くの医学研究により広く認知される様になりましたが、1
CBDが持つ治療効果の本質は、エンドカンナビノイドシステム(ECS)との相互作用にあります。エンドカンナビノイド受容体を軸として働くECSは、痛み、空腹感、感情など、私たちのあらゆる身体機能が正常に保たれる様に常に調節しています。つまり、体内に問題が起こった時に治癒プロセスを開始させるかどうかの手綱を握っているのが、このECSなのです。CBDは、この治癒プロセスを主導するエンドカンナビノイドの生産量を増大させるため、治癒プロセスが促進されます。
関連記事: エンドカンナビノイドシステム
CBDオイルを本態性振戦に使用すると、オイルに含まれるCBDを含めた多くのカンナビノイドが、筋肉の動きをつかさどるエンドカンナビノイド受容体と相互作用し、ECSの調節機能を活性化させます。この受容体は、脳と体全体に分布しており、CBDオイルがこれらの受容体に作用することで、リラックス効果、抗炎症作用、震えの軽減が期待できます。とある研究では、CBDが神経保護剤として効果的に作用し、上記の効果が証明されました。2
近年のCBD市場の拡大に伴い、過去に発表された目覚ましい研究結果が再び注目を集め始めています。こうした流れもあり、CBDが本態性振戦の治療法として正式に認められる事への期待が高まっています。
さらに、この流れに拍車をかける研究が、カリフォルニア大学サンディエゴ校で新たに開始されました。このFDA(米食品医薬品局)の承認を得ている正式な研究では、3 CBDとTHCの本態性振戦への効果を本格的に検証する試験が行われ、2019年末に結果が発表されました。この臨床試験の主任であるフェッター・ナハブ博士は、これまで解明されてこなかった本態性振戦の適切な治療法がCBDによって成し得るかもしれないとし、非常に大きな情熱を注いで研究に取り組んでいます。彼女はこの疾患について以下の様にコメントしています。「本態性振戦の患者は、パーキンソン病の10倍近くいると言われていますが、誰もこの疾患についてはっきりとした説明ができません。それほど開拓が進んでいない分野において、根本的な治療法が見つかる可能性が見えてきたということは、とても大きな医学進歩になります」
本態性振戦のためのCBD:摂取方法
本態性振戦を治療・改善するためにCBDを使用する場合、二通りの摂取方法があります。CBDに対する体の反応は人それぞれ異なりますので、今からご紹介する方法の中から、自分の体にあった最善の方法を見つけて安全に使用しましょう。
- CBDオイルの舌下摂取
CBDオイルは通常、スポイト付きの小さなボトルに入っています。使用する際は、数滴を舌の裏に垂らし、1分ほど含んだままにしてオイルを体内に吸収させます。 - CBDリキッドの吸引摂取
CBDのEリキッドによる摂取は、本質的振戦の自然療法の中でも最も手軽で人気が高い方法です。摂取すると、CBDの蒸気が肺に入り、より速やかに血流に吸収され、リラックス効果を発揮します。
CBDを摂取するにあたって、どの人にとっても最適な摂取方法というものはありません。なぜなら前述の通り、CBDに対する反応は人それぞれで、自分の体の声に常に耳を傾け、自分にだけの最適な量を見極める必要があるからです。
本サイトでは『CBD: A Patient’s Guide To Medical Cannabis(レオナルド・ライノフ著)』というCBDの用法・用量に関する本で紹介されているステップアップ方式を常に推奨しています。4 この方式では、1日に1滴の摂取を三回に分けるといった低用量摂取から始めて、3日ごとに徐々に量を増やし、この量が1日3滴を三回になるまで続けていく中で、体がどの様に反応するかを丁寧に観察する、という摂取方法を推奨しています。軽度の症状であれば、だいたい1回につき25mgが十分な摂取量と言われています。
関連記事:CBDの摂取量ガイド
CBDを使用した本態性振戦患者の体験談
ネット上では、本態性振戦に対するCBDの効果について語られている体験談が、多く見つかります。あるCBDショップでは、提供したCBD製品によって症状改善が見られたユーザーの声が取り上げられています。この女性は、CBD製品のおかげで本態性振戦とポルフィリン症の症状に悩まされる事がなくなったと話しています。
まとめ
これまでのことから、CBDは本態性振戦の治療に極めて効果的だという事がわかりました。CBDを使用する事により、けいれんが大幅に減少し、通常の日常生活を送ることができる様になったという事例も、数多く報告されています。摂取方法は、CBDオイルの経口摂取とEリキッドの吸引摂取がより高い効果を期待できると言われています。コスト面でも、他の処方薬や手術に比べ、はるかに安価です。また、天然成分なため副作用も極めて少ないため、日々の生活を改善するための治療薬として、安全に使用する事ができます。
本態性振戦は、必ずしも治療が必要な疾患ではありません。しかし、本態性振戦が生活に深刻な影響を与えるほど重度な場合には、代替手段を用いて症状を抑える必要があるかもしれません。
参考文献
- Gloss D und Vickrey B. „Cannabinoids for epilepsy.“ PubMed Cochrane Database Syst Rev. (2014) [↩]
- Joseph Maroon und Jeff Bost. „Review of the neurological benefits of phytocannabinoids“ Surgical Neurology International(2018) [↩]
- Fatta B Nahab „Trial of Cannabis for Essential Tremor“ Clinical Trials (2019) [↩]
- Leinow,, L. and Birnbaum, J. (2017). CBD: A Patient’s Guide to Medicinal Cannabis. North Atlantic Books. [↩]