カンナビジオール(CBD)は、酒さと呼ばれる、顔中央の皮膚が炎症を起こして赤くなる慢性的な皮膚疾患の治療に有効だと言われています。 酒さは、皮膚に赤い斑点、隆起、発疹などができる事で外見に影響を与えるために、様々な社会心理的な問題を引き起こします。1 古くから言い伝えられている伝統的な治療法はありますが、そのいずれもが根本的な治療にはつながりません。しかし、CBDと呼ばれる成分がこの疾患の効果的な治療法になる可能性がある事が、最近の研究で明らかになりました。本記事では、酒さに対するCBDの効果、使用方法など、この疾患とCBDに関するあらゆる情報をまとめ、この天然のカンナビノイド成分の将来について考えていきたいと思います。
酒さとは?
酒さとは、顔面の中央が紅潮する状態が続く、慢性的な皮膚疾患で、2 そのままにしておくと炎症を起こした皮膚血管がさらに拡大して赤みが強くなり、さらには顔に小さな炎症性の隆起が生じたり、涙目のような結膜充血が起こったり、皮膚が乾燥してかゆくなったりします。顔は体の中で最も目立つ部分です。そのため、この疾患を患う事で身体的な不快感だけでなく、不安や自尊心の減退などの心理的影響も起こり、日常生活の質の低下や、社会的に差別や偏見に苦しむ人も少なくありません。
酒さに悩む人が最も多い年齢層は30〜50代で、男性は重症化する傾向にある一方で、罹患率は女性の方が高い事が特徴です。酒さの直接的な原因はまだはっきりと解明されていませんが、免疫系が一因であると考えている専門家が多く、また、ストレス、薬物、日焼け、天候などの環境要因も大きく関係しているようです。3
さらに興味深いことに、全体の約3分の1が家族内発症だといわれており、遺伝的な要因がある事も示唆されています。
現在医療機関で行われている酒さ治療は、基本的に症状改善が目的であり、根本治療を目指す治療法は導入されていません。最も一般的な治療法は、外用クリームタイプのメトロニダゾールなどの抗生物質をで皮膚に塗布するか、飲み薬として服用する薬物治療です。また、ステロイドクリームが処方されることもありますが、いずれの薬も、吐き気、炎症、じんましんなどの副作用を伴います。より極端な治療法としては、レーザーで血管のサイズを小さくし、皮膚の赤みを抑えるという手術もあります。
CBDが酒さを改善するメカニズム
CBDは、カンナビスから抽出される向精神作用を持たない有効成分で、抗炎症作用や抗酸化作用などの多様な治療効果がある事がわかっています。CBDがこのような作用をもたらすのは、私たちの体内に備わっているエンドカンナビノイドシステムが大きく関係しています。エンドカンナビノイドシステムとは、CBDなどのカンナビノイドと呼ばれる化合物と相互作用して体内のあらゆる部分のバランスを調節している、体の健康の軸となる機構です。たとえば、ストレスホルモンのレベルが上昇するなどして体内システムのバランスが崩れると、CBDはエンドカンナビノイド受容体をその場合に応じて抑制したり活性化させたりして関連する症状を緩和します。
意外にも、酒さを引き起こす原因の一つに不安感が挙げられます。CBDオイルは抗不安作用があるため、酒さによるストレスを和らげるという意味で治療に役立つ可能性があります。同様に、過剰な免疫反応もこの皮膚疾患の原因であると考えられており、皮膚に生息する微小なダニや、腸内細菌の一種であるヘリコバクター・ピロリ菌が免疫系を刺激する事で血管が拡張し、皮膚表面に腫れや赤みが現れます。広く知られているCBDの持つ抗炎症作用は、こうした原因によって引き起こされる炎症を抑え、同時に痛みを軽減します。4 また、前項で触れた抗酸化作用によって、酒さの症状を悪化させることで知られる太陽光線から肌を守ってくれます。
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酒さ治療としてのCBDの使用方法
CBDオイルを酒さ治療のために使用する場合、以下のような使用方法が考えられます。
Sublingual method
Oral method
Topical method
残念ながら、現段階では酒さに対するCBDの最善の用量・用法を判断するための情報が揃っていません。その理由の一つとして、アメリカではつい最近までこの分野の研究が違法だったためにまだ十分な研究結果が集まっていないという事が挙げられます。ただ、舌の裏に含ませたり、食べ物と一緒に摂取したりするという一般的な方法でこのカンナビノイドと呼ばれる天然の化合物を摂取する限りにおいては、極めて安全に使用する事ができるでしょう。
CBDオイルの経口摂取は、バイオアベイラビリティー(血流に吸収される割合)が低くなる傾向にありますが、かといってCBDそのものを単独で摂取すると、逆に有効成分の摂取量が減少する事がわかっています。その理由としては、消化器系の酵素がCBDを代謝物質に分解し、濃度が低下してしまうためです。このため、消化器系を迂回して吸収させることができる舌下摂取がより効率的な摂取方法だと言われています。この方法でCBDを摂取する場合、飲み込む前に1~2分間、舌の裏にオイルを含ませて吸収を待つとより大きな効果が期待できるでしょう。
CBDオイルは通常、30ml容器の中にはスポイトが入っている状態で販売されています。睡眠調節のためのホルモンであるメラトニンなど、他のサプリメントと同時に摂取する事で更なる効果を得る事もできます。また、最適な濃度は用途によって異なり、スポイトひと吸いあたり17mgのCBDを含むものから、最も濃度の高いものではひと吸いあたり84mgのCBDを含むものまであります。
酒さ症状がある顔面にCBDを使用する方法
通常、CBDオイルを顔に直接塗布する事で、酒さの症状が緩和していきます。お好みのCBDオイルを顔の症状が現れている箇所に数滴垂らし、優しく擦り込みましょう。また、数滴のCBDオイルをフェイスバームやクリームに混ぜて、フェイスクリームとして使用しても十分な効果が期待できます。
CBDと酒さに関する医学研究で明らかになったこと
CBDの酒さに対する治療効果を検証した医学研究は限られていますが、CBDがこの皮膚病を治療できることを示唆する研究論文は多くあります。2018年に権威ある皮膚科学の専門サイトに掲載されたレビュー論文では、CBDが炎症と過剰免疫反応を大幅に低下させるなどして皮膚病に対して高い治療効果を発揮する可能性があるとしています。そして、炎症と過剰免疫反応は、酒さの原因となる症状であるため、CBDには酒さを治療する潜在的な治療効果があると考えられているのです。5
また、学術雑誌「The Journal of Clinical Investigation」に掲載された2014年の研究では、CBDが酒さとにた症状が現れるニキビに対して抗炎症作用をもたらすと発表されました。6
まとめ
結論として、CBDには、炎症や赤みなどの症状の緩和や、酒さの直接的な原因として疑われている免疫系の調節を行う力があり、酒さ治療に大いに役立つ可能性があるといえるでしょう。こうした治療効果を期待して、酒さ治療のためにCBDを摂取する場合は、食べ物と一緒に摂取する経口摂取や、舌の裏にオイルを垂らして吸収させる舌下摂取が最適な方法だと考えられています。CBDが酒さの諸症状を改善することは数々の研究によって明らかになっていることに加え、カンナビスに対する規制緩和の動きが高まっていることもあり、CBDと酒さに関する研究が今後一層盛んに行われていくことで7
参考文献
- Tabassum, N. and Hamdani, M. (2014). Plants used to treat skin diseases. Pharmacognosy Reviews, 8(15), p.52. [↩]
- WebMD. (2019). What Is Rosacea?. [online] [↩]
- Mikkelsen, C., Holmgren, H., Kjellman, P., Heidenheim, M., Karppinnen, A., Bjerring, P. and Huldt-Nystrøm, T. (2016). Rosacea: a clinical review. Dermatology Reports, 8(1). [↩]
- Costa, B., Colleoni, M., Conti, S., Parolaro, D., Franke, C., Trovato, A. and Giagnoni, G. (2004). Oral anti-inflammatory activity of cannabidiol, a non-psychotropic constituent of cannabis, in acute carrageenan-induced inflammation in the rat paw. Naunyn-Schmiedeberg’s Archives of Pharmacology, 369(3), pp.294-299. [↩]
- Marks, D. and Friedman, A. (2018). The Therapeutic Potential of Cannabinoids in Dermatology. Skin Therapy Letter, 23(6). [↩]
- Oláh, A., Tóth, B. I., Borbíró, I., Sugawara, K., Szöllõsi, A. G., Czifra, G., … & Ludovici, M. (2014). Cannabidiol exerts sebostatic and antiinflammatory effects on human sebocytes. The Journal of clinical investigation, 124(9), 3713-3724. [↩]
- Oláh, A., Tóth, B., Borbíró, I., Sugawara, K., Szöllõsi, A., Czifra, G., Pál, B., Ambrus, L., Kloepper, J., Camera, E., Ludovici, M., Picardo, M., Voets, T., Zouboulis, C., Paus, R. and Bíró, T. (2014). Cannabidiol exerts sebostatic and antiinflammatory effects on human sebocytes. Journal of Clinical Investigation, 124(9), pp.3713-3724. [↩]